先端医用量子線技術科学コース
九州大学大学院 医用量子線科学分野 博士課程
前田 英哉(九州大学) 診療放射線技師
私は、2021(令和3)年度に、九州大学の「先端医用量子線技術科学コース」修士課程を修了しました。
九州大学の学部在籍中に、放射線計測学や放射線物理学の知見が、臨床で用いられる様々な機器の特性と深く関わっていることを知りました。その中でも中性子計測に興味を持ち、大学院に進学して研究指導を受けました。
修士課程では、線形加速器 (Linac) によるX線放射線治療で副次的に発生する光中性子の測定のために、中性子に感度があるシンチレータの特性評価を行いました。私が所属する研究室は実験を重んじるスタンスで、研究用原子炉に泊りがけで赴いて中性子の照射実験を行うという、貴重な経験を積むことができました。もっとも、実験では様々なトラブルに遭遇しなかなか計画通りにいかず、実際に手を動かしてデータを得ることの、難しさと重要性を痛感しました。
私が在籍した時期は、コロナ禍の緊急事態宣言で実験がキャンセルになるなど、不自由に感じることもありました。一方で、オンラインでのイベントが急速に広まった時期でもあり、海外を含めて遠方で開催されたセミナーに参加しました。大学院での講義やこのようなセミナーを通して、初学者向けの基礎知識から国内外の動向まで幅広く勉強する機会を得ました。
幸いなことに、修士課程在籍中に医学物理士の認定試験に合格できました。この試験は出題範囲が広く定番のテキストがまだ存在しないため、適切な情報源を自力で参照する必要があります。試験の一か月ほど前に、イレギュラーな形で立て続けに実験が発生して時間が十分に確保できなかったのですが、それまでに蓄積した知識から的を絞って勉強することができました。 現在私は博士課程に進学して、ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) のための中性子計測に関係する研究を行っています。中性子計測には、中性子に由来する信号と、光子線など他の放射線に由来する信号をいかに弁別するかという特有の難しさがあります。このためBNCTでは、簡便に扱える線量評価手法がまだ確立されておらず、他の治療法と比較するとやや煩雑な手法が用いられています。私の研究が実践的な線量評価の一助となるように、研究を行っていきたいです。
(2024(令和6)年10月掲載)