熊本大学・研修医・大学院一体型がん専門博士養成コース 平成30年度修了者
現職 熊本大学大学院消化器外科学 診療助手
山尾 宣暢(熊本大学) 医師
私は、2018(平成30)年度に、熊本大学の「がん専門博士養成コース」を修了しました。医師となってからは消化器癌に興味があり2013(平成25)年に熊本大学大学院消化器外科学に入局いたしました。近年は外科治療のみならず消化器癌に対する集学的治療が発達し、日々医療の進歩を実感する一方で、その治療のメカニズムや癌の進展の機序についての知識は実臨床だけでは得られないと考えるようになりました。そこで2015(平成27)年に熊本大学の「がん博士養成コース」に進むこととなりました。
私は膵癌の癌微小環境における癌関連線維芽細胞(CAF)の老化と癌進展の役割について研究してきました。Caveolin-1という膜蛋白を細胞老化の指標とし、そのCAFにおける発現の臨床学的意義や予後との相関について明らかにしました。さらには膵癌の切除標本より膵癌CAF株を樹立し、CAFの培養上清で膵癌細胞株を培養することでCAFにおけるCaveolin-1の発現が膵癌細胞の浸潤・運動能を促進することを明らかにしました。以上の内容を論文発表し、学位取得に至りました。がんプロコースでは消化器癌のみならず様々な癌疾患について各分野の専門の講師より講義を受けることができます。今後がん診療を行う上で大変有意義な時間となりました。
また、がんプロ在籍時には「外科専門医」、「がん治療認定医」、「消化器病専門医」を取得することができました。がんプロで学んだがんについての基礎的な知識が各専門医取得に繋がったと思います。
単位取得後は大学病院の診療助手として実臨床に身を置きながら肝胆膵外科医としての日々の診療・研究を全うしております。本プログラムを経験したことによってがんについて多方向から考えることができるようになりました。また、がんプロ在籍時に国際学会にも多数参加する機会をいただいたことで常にグローバルな視野をもつことできるようになりました。医師としてだけでなく人間的な成長も得られたと思います。ここでの経験を糧に今後のがん医療の発展に貢献できるよう臨床・研究に取り組んでいきたいと思います。
(2019(令和元)年8月掲載)