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修了者の声VOICE

九州大学 先端医用量子線技術科学コース  平成29年度修了者

現職 大阪医科薬科大学 関西BNCT共同医療センター 特務助教

柿野 諒(九州大学) 医学物理士

私は、2017年度(平成29年度)に、九州大学大学院医学系学府保健学専攻の「先端医用量子線技術科学コース」を修了しました。

九州大学の学部在籍中に放射線治療に興味を持つようになり、放射線治療に関わる研究室に入りました。放射線治療の中でも陽子線治療や重粒子線治療等、日本が牽引する粒子線治療に関わる仕事に就きたいと思い、先端医用量子線技術科学コースに入学しました。

本コース在籍中の研究テーマは、放射線治療中に発生する中性子の線量評価法の開発でした。在籍していた研究室で開発された検出器を用いて、様々な測定条件下での検出器の応答を基に、逆問題的に中性子線量を評価する実用的手法を考案しました。本内容を国内・海外学会で発表し、海外雑誌に論文投稿しました。また、本コース在籍中には、医学物理士認定試験に合格しました。さらに、台湾国立精華大学に留学する機会もいただき、中性子を用いた癌治療BNCT(後述)に関する医学物理業務を学びました。在籍中に熱心に指導していただき、資格取得・留学の機会まで与えていただいた研究室の先生には大変感謝しております。

現在、私は大阪医科薬科大学関西BNCT共同医療センターにて、特務助教(医学物理士)として臨床・研究業務に携わっております。 BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)とは、癌細胞に集積するホウ素薬剤と体外から照射する中性子の核反応を利用して、癌細胞を選択的に破壊する最先端の放射線治療の一種です。2020年6月より、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」について保険診療が開始しました。また、脳腫瘍や悪性黒色腫等の治験も進行段階です。

BNCTは、放射線腫瘍学、医学物理学、薬学、核医学の集学的学問を基盤とし成立する治療法です。医学物理士である私は、BNCTの治療計画立案、中性子照射装置の品質管理業務、ならびにBNCTの更なる発展に向けた研究開発に従事しております。中性子は物理学的特性上身体の深部に届きにくいため、BNCTの潜在能力を十分に享受できない症例も、残念ながら一定数存在します。この問題点を物理工学的な立場から解決し、BNCTにより少しでも多くの患者さんを救っていけるように、今後も日々努力を続けていきたいと思っております。

(2021(令和3)年7月掲載)

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